日本の製造業を代表するグローバル企業のトヨタ自動車の拡大路線に急ブレーキがかかった。6日発表した2009年3月期の営業利益予想は前期比73.6%減の6000億円、世界販売台数(連結)見通しも前期実績より67万台減の824万台に下方修正した。金融危機の影響による世界的な需要減と急激な円高によって、当初見通しに比べ営業利益が1兆円吹き飛んだ計算だ。下期もほとんど営業利益が出ない「緊急事態。いまだかつて経験したことのない厳しい環境」(木下光男副社長)が続く。トヨタ再生の処方箋(せん)はあるのか。
トヨタの誤算は、金融危機の傷が深い欧米だけでなく、頼みの綱だった新興国需要も鈍化したこと。9月の中国の販売実績は、前年同月比7.3%増の4万9000台。かろうじて前年水準を上回ったが、1〜9月累計が前年同期比24%増だったことからすれば、減速感は鮮明だ。輸出主導で好業績を続けてきたトヨタの苦境は、日本の製造業全体の苦悩を象徴しているが、危機克服のカギは何か。
経営コンサルティング会社ATカーニーの川原英司シニアアドバイザーは特定市場に依存するのではなく、「世界中に散らばる成長国に競争力のあるクルマを効率的に供給し、多くの国で販売台数を少しずつ積み上げる手法が有効」と強調。その布石は、すでにトヨタの手中にあると指摘する。それは、複数の海外拠点がエンジンなどの主要部品や完成車を相互に供給し合う04年始動のプロジェクト「IMV(革新的国際多目的車)」だ。
IMVは、1つの車台を共有して新興国の多様なニーズに即応。現在、ピックアップトラックとミニバン、SUV(スポーツ用多目的車)の3タイプを日米を除く各国に供給。主要な生産・輸出国はタイや南アフリカなど5カ国だ。IMVで生まれた世界戦略車の1〜9月実績は、生産が57万3000台(前年同期比13%増)、販売が53万7000台(8%増)。需要や為替変動に収益を左右されないIMVに絞ってみると、一定の競争力を死守している。 ◇
■研究開発費は維持
一方で、トヨタは大幅減益でも今期の研究開発費の下方修正は見送り、9200億円と前期並みを確保する。経営環境が悪化し、燃費基準や排ガス規制の厳格化で開発負担が増す中で「プロジェクトを精査し、成長に不可欠なところに重点投資する」(木下副社長)方針だ。
世界的に需要減が続くとはいっても、ハイブリッド車や小型車への需要シフトは加速するとみられる。「全方位の環境戦略」は回復に向けた最大のキーワード。なかでも次の成長を牽引(けんいん)する環境技術として重視するのが、家庭用電源で充電できる「プラグインハイブリッド車(PHV)」で、09年末の実用化に向けて日米欧で試験を展開中。次世代事業の育成も急務だ。トヨタは車載用電池の開発・生産でパナソニックと連合を組む。パナソニックはPHVなどの次世代環境対応車に使う基幹部品「リチウムイオン電池」で最大手の三洋電機の買収に動いており、三洋とも関係が深まれば、トヨタにとっては“渡りに舟 ”。将来「エンジンに取って代わる」(業界関係者)可能性のある電池ビジネスで主導権を取れば、新たな収益源になるのは間違いない。
抜粋 フジサンケイビジネスアイ
・コメント
輸出企業の円高に対する耐性は、依然よりもついてきていますが、まだまだ法律の方が追いついていない現状があります。
現在ビジネスのグローバル化に伴い、国境を越える取引やインターネットの発達とともに、ビジネス上の国境自体がなくなりつつあります。さらにグローバルな金融取引も増加しています。
しかしながら、わが国の税務当局は、このような国境を越えたグローバルな取引に対しても、従来の国内取引がメインであった時代の税法にもとづいて解釈をしようとしています。また、各国が自国の課税権を守るため、かなり活発な課税を行っているのが現状です。
どういった形で課税するのか、会計基準はどの国で行うのかが明確にならない限り、本当の利益というものは見えてこないのかもしれません。1兆円というセンセーショナルな見出しですが、営業利益は売上総利益−販管費です。大企業になると本当の利益など一部の幹部以外、誰も分からないのかもしれません。
・<トヨタ>大幅減益で雇用への影響深刻化も 毎日新聞
国内自動車最大手のトヨタ自動車が6日、09年3月期連結決算の営業利益予想を前期比で7割以上減る見通しと発表し、国内自動車メーカーの業績悪化が鮮明になった。部品や素材メーカーなど幅広い企業と取引のある自動車メーカーの業績悪化は、多数の企業に打撃を与える。既に広がりつつある雇用への影響が深刻化する可能性もあり、日本経済の傷口を広げかねない。
「トヨタがくしゃみをしたら、1次下請けは風邪をひく。その下請けは重体だ」。愛知県豊田市のトヨタの3次下請けのブレーキ部品組み立て会社社長(69)は嘆く。「もうコスト削減は限界。単価も一度下がると景気が回復しても戻らない。採算が合わなくなったら経営をやめるしかない」
米国発金融危機を受けた消費の急激な冷え込みで、米国内の自動車市場は深刻な縮小が続く。トヨタは夏ごろから北米輸出を減らしており、これに伴い下請けメーカーは10月以降、前年比2〜3割の大幅減産に入った。急激な減産を強いられ、余剰人員を抱えたまま赤字転落する企業も少なくない。
ある2次下請けのプレス会社社長は「生産計画が毎月下方修正され、見通しがまったく立たない」と悲鳴を上げる。
自動車業界の不振は、鉄鋼やガラスなど素材メーカーの減産も加速させている。新日本製鉄など鉄鋼大手4社は先月の中間決算発表でそろって粗鋼の減産を公表、減産規模は計約180万トンに及ぶ。
期間従業員や派遣社員など非正規社員の削減も進んでいる。トヨタも6月末で期間従業員の契約更新を停止。3月時点の約8800人が来年3月時点で3000人程度と3分の1に激減しそうだ。
厳しい雇用環境は自動車業界全体に広がっている。日産自動車は国内の派遣社員を11月末までに1000人削減する。マツダも派遣社員の人員削減を検討している。国内最大の自動車部品メーカー、デンソーも4〜9月に期間従業員を約1割減らし、下半期は事実上、更新を停止する。
自動車業界の業績低迷が、日本経済全体に波及してきたことについて、トヨタの木下光男副社長は6日、「自動車産業はすそ野が広く、大変大きな影響があると思う」と述べた。

